球数制限は高校野球を変えるか
こんにちは,しこしこ亭うどん(@shikoshikotei)です.
今回は高校野球の球数制限についてのネタです.
一石を投じた新潟県高野連
新潟県高野連は昨年末,春季県大会から1試合100球の球数制限の導入を決定した.これに現在日本高野連は待ったをかけている状況だ.この理由として「部員不足の加盟校が多い現状では慎重であるべき」「勝敗に影響を及ぼす規則については全国で足並みを揃えて検討するべき」といったことが挙げられている.
連投や完投は美しくない
高校野球は学生スポーツとしては異常ともいえるほど注目度が高い.これ自体悪いことだとは思わないし,一生懸命に取り組んできた選手にとって,大観衆の前でプレーをすることがこの上ない幸せであることは間違いない.だが選手はあくまで高校生だ.興行的な要素があるプロスポーツと一緒くたにしてはならない.
前回書いたスポーツ観戦の記事と関連があるかもしれないが,世間は高校球児に自分たちの理想像を押しつけているのではないだろうか.坊主頭で軍隊のような入場行進をし,毎日朝から晩まで練習をするというようないわゆる「高校球児らしさ」を消費したがっているように感じる.
その一つとして,一人のエース投手が連投,完投するということが美しいとされる一面があるのではないだろうか.まずこの意識を捨てなければならない.連投や完投は美しいものではない.痛々しいものだ.僕は猛暑の中連投を続ける投手を見ると心配で仕方がない.
球数制限のメリット
ここでは球数制限のメリットについて触れる.まず,第一に投手の身体を守れるということだ.というかメリットはこれに尽きる.夏の甲子園のような過酷な環境での連投や完投が投手に負担をかけていることは明白である.無理な投球数で選手生命が短くなったというような悲劇を生み出さないために球数制限は効果的だろう.
球数制限のデメリット
反対に,球数制限のデメリットだ.デメリットと言っても,選手の身体のことを考えたときにデメリットはない.150球,200球投げるよりも100~120球におさめる方がいいに決まっている.だから僕が思う理想は,球数制限を定めなくても選手あるいは監督の意思で100程度を目処に交代することだ.
投げ過ぎは良くないということがこれだけ広まった現在は,練習や練習試合であれば上記のような理想に近づいているであろう.しかし,高校野球の大会はトーナメント方式で行われる.
基本的に球数制限導入に賛成の立場である僕が完全に賛成しきれていないのは高校野球の大会方式がトーナメントであるからだ.一発勝負の負けられない試合が続くトーナメントではどうしても一人のエースに頼らざるを得ない.
守備力≒投手力
野球というスポーツは守備時において圧倒的に投手の責任が大きい.極端な例を挙げると,いくら投手以外の8人が全員ゴールデン・グラブ賞の選手でも投手がめった打ちを食らったり,四球を連発したりでは失点してしまう.逆に守備は素人でも投手が三振を取り続ければ失点しないのが野球である.
さて,僕が球数制限に完全に賛成しきれない要因であるが,それは選手層が薄い公立高校が勝てなくなってしまうという懸念だ.甲子園常連の強豪私立ではほかの高校ならエースになっているような投手がゴロゴロいるだろう.しかし,いわゆる普通の公立高校にそのような選手層はない.球数制限が導入された場合,強豪校がエース級の投手を継投してくるのに対し,なんとか一人で踏ん張ってきた投手を変えざるを得ない状況になってしまう.
もし自分が球数制限により降板を余儀なくされた投手だったら「ルールだから」と納得できるだろうか.この点を踏まえると「部員不足の加盟校が多い現状では慎重であるべき」「勝敗に影響を及ぼす規則については全国で足並みを揃えて検討するべき」といった日本高野連の意見も間違ってはいないように感じる.
複数投手制の時代へ
上のグラフはNPBの完投数の推移である.このグラフが示すように現代野球は投手の分業制が進んでいる.この流れは,少なからず高校野球にも影響を与えている.近年複数の投手を併用しながら勝ち上がる強豪校は増えている印象を受ける.これは複数の投手で戦うことのほうが合理的だからだ.
プロ野球の世界では9人で1試合を戦う時代は終わったと言っていいだろう.先発,中継ぎ,抑えと細かく分業され,いわゆる勝ちパターンを構成する投手の重要度は言わずもがなだ.
高校野球の話に戻るが,球数制限の導入は複数投手で戦わざるを得なくなる.よって複数投手の時代が訪れることは間違いない.上記の球数制限のデメリット,というか僕が思うマイナス面のような課題はあるが,この球数制限の導入は高校野球の転換期となる可能性がある.内野手を4人揃えなくてはならないように投手を少なくとも2~3人揃えなくてはならない時代となるのだ.
公立高校の不利についてばかり触れていたが,強豪校も複数投手を育てることは容易ではない.また,どの投手をどの場面で起用するかといった采配の面も非常に重要になってくるだろう.プロ野球のように継投のタイミングが勝敗を左右するケースが増えるかもしれない.それはそれで新たなドラマを生むことになるはずだ.そしてチーム内で投手の競争が活性化することは間違いない.その点複数投手での戦いというのは高校野球の発展となる可能性がある.
試験的,段階的な導入を
すこし触れたように僕は球数制限の導入には賛成だ.しかし,前例がない以上まずは試験的に導入というのが現実的だ.
ここからは僕が考える試験的導入案について書いていく.まず,新潟県高野連が提案した1試合100球はいきなり導入するのは厳しいと考えられる.100球では9回を投げ切ることは非常に難しい.僕の提案は1試合150球だ.これで導入のハードルは下がるのではないだろうか.
そして,もう一つの提案は選手権大会(夏の大会)以外での導入だ.どうしても3年生にとって最後の大会である.夏の選手権大会いでは一勝の重みが変わってくる.もちろんいずれは夏の大会でも導入すべきだと思うが,まずはそれ以外の大会で導入してはどうだろうか.
昨夏の甲子園以降,球数制限についての議論が盛んになっていることを感じる.ようやく議論されるステージに到達したと言えるだろう.これからさらなる議論が必要になるのは間違いないが忘れてはならないのは選手ファーストの意識だ.大人の都合で無理な投球を続けさせるようなことはあってはならない.何より必要なのは選手をケガから守るためのルール作りだ.
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以上です!最後まで読んでいただきありがとうございました。